火星の後継者の乱。
 一時は世界中を騒がせたそのクーデターは、少なくとも何も知らぬ人々にとっては実にあっけなく終焉を迎えることとなる。
 ホシノルリ。"電子の妖精"との異名をとる、宇宙軍の最年少艦長。彼女のシステム掌握によって、後継者たちはその保有する機械群の悉くを乗っ取られ、まともな抵抗一つさえできずに降伏せざるをえなかった。
 まさに圧倒的。人々は彼女を英雄と称え、後継者たちは彼女を魔女と罵倒する。
 恐るべきかな電子の妖精。銀の髪と金の瞳を持つ、およそ人ならざる幻想の如き天才児。広大な情報の海を支配する、可憐にして冷徹なる女王。
 しかし英雄とは、いつの世においても権力者に疎まれるものである。
 今の情報化社会。機械の存在なくしてはまともに生活していくことなど不可能と言ってもよい程に、世界には機械が浸透している。ならば、その機械を制する者こそが世界を制すであろうことは明々白々。ホシノルリ、その力はあまりにも強大。なれどホシノルリ、たかが16の小娘。
 飼いならせるならば核にも匹敵する戦略兵器となろうが、しかし先の乱においての圧倒的能力が畏怖を呼び、例え本人にそのような意思がなかろうと、存在そのものが恐怖となる。ならば殺してしまえと、誰が最初に思ったか。
 妖精は幻想のままに。世界は人間のものであると、彼女はその命を狙われる。
 
 だが、それを許すわけにはいかない男がいた。

 火星の後継者の乱。
 実際には、その闘争は決して短くはなかった。
 遺跡の確保、A級ジャンパーたちの拉致と人体実験。地獄という言葉すら生温い、政治という名の陰惨な戦場。ホシノルリは、その最後の舞台に出るべくして出たに過ぎない。人の目に映ることのない世界の裏側で、後継者たちと血で血を洗い生き馬の目を抜く死闘を繰り広げた者たちが存在していた。男はその中の一人である。
 男の名はテンカワアキト。誌面においては"The Prince of Darkness"と呼ばれる、ターミナルコロニー襲撃の実行犯。史上稀に見る凶悪な犯罪者として悪鬼の如く憎まれる、時空間跳躍を行使する異能者。
 彼の凶行こそが火星の後継者たちを追い詰め、ナデシコCの完成を早めた要因であることなど、知っている者はあまりにも少ない。
 確かに彼は多くの人を殺した。だがその心中、殺戮に至る経緯。もしも彼が動かなければ、一体どれ程の被害が出たものか。

 何よりも、テンカワアキトがホシノルリの義父であることを、果たしてどれだけの人間が知り、そして信じることだろう?






 ──以上、前置き終わり。







英雄と過保護な罪人
The fairy struggles and suffers.








 ネルガルでシークレットサービスとして勤務していたテンカワアキトは、宇宙軍及び統合軍で秘密裏に練られている『ホシノルリ暗殺計画』の情報を入手した瞬間それこそマッハ、というかボソンジャンプでルリを保護(誘拐とも言う)した。その際に時刻が深夜だったとか愛娘が熟睡していたとかアキトさん抱き枕(機密レベルAAA)にちょっと涎がついていた(機密レベルSS)とかその辺のことは一切合切壮絶に無視することにしよう。

 とにかくルリとしては、目を醒ませば知らない天井。一体何が起こったものか、幼少より英才教育を受けた彼女をしても起き抜けの頭で正確な解答を導き出せるわけもなく、「あと五分……」とかお約束なことを呟きつつころんと寝返りを打ち、そこで寝台から転げ落ちるという事態に陥った。今まで彼女が就寝時に利用していた艦長用のそこそこに広いベッド(抱き枕が巨大なせいで特注品)と比較して、ネルガルの用意したそれは若干狭かったのがその不幸の原因であろう。
「……〜〜ッ!!」
 強かに頭を打ち、声も上げずに悶絶するルリ。ふと気が付けば、アキトさん抱き枕は彼女の手の内になく、室内の隅、寝台から最も離れた壁に立て置かれてその穏やかな笑みを向けていた。あれさえ手元に置かれていれば、その抱き心地抜群の柔らかさと暖かさでルリを衝撃から守ってくれたであろうに、世は無情である。例え作り物といえど、アキトに醜態を晒したという感覚がルリを襲い、一気に覚醒する。
「あら、起きた?」
 かなり嫌なタイミングで女性の声がかかった。振り向いたルリの表情は、彼女をよく知る者でさえ見ることのない程の赤面顔。しかも髪は下ろしたままで服装は魚の柄のパジャマ。アララギ艦長ならずとも"電子の妖精"ファンならば通常の三倍鼻血を噴出するショットであろう。写真を撮れ。録画しとけ。これだけで結構な財を築ける。
 しかし、その光景を目撃した人物は精々珍しいものを見た、という程度にしか思わなかったようである。艶やかな金髪と切れ長の双眸、そして白衣。心の造りが人とは違うと豪語する、イネス・フレサンジュの姿がそこにあった。
「イネスさん? ……あの、ここ何処ですか?」
 見知った顔、そしている筈のない人物の訪問により、ルリの聡明な頭脳がようやく活動を開始した。まだ痛い。コブになっているかもしれない。
 イネスがいるということはネルガルだろうか。しかし彼女は最早数少ないA級ジャンパーの一人。その気になれば何処からでも姿を消し、何処にでも現れる。地球であろうが月であろうが火星であろうが木星であろうが──
「って、あの。私ナデシコCにいたはずなんですが。航行中の」
「そこは流石に人類初のジャンパーかしら。あとナデシコCについては特に心配いらないわ。マキビ君がきっと頑張ってくれているでしょうから」
「それだけじゃなく、任務中に艦長がいきなり姿を消したら騒ぎになったりとか──」
 そこまで口にしてから、ルリは気付いた。
「人類初のジャンパーって……アキトさんが?」
 イネスの眼に怪しい光が宿る。ルリはこの後の展開を悟るも、もう遅い。
「説明しましょう!」



 自分が連れ去られた経緯を聞き、ルリは感想に困った。自分の存在が脅威に思われるだろうことは予測していたし、事実周囲に不穏な気配を察知したこともある。しかし、まさかそこでアキトが動くとは思っていなかったのである。アキトの性格からいって放置はしないまでも、精々影から妨害するくらいだろう、と。
 だというのに、思いっきり迅速に保護された。ルリの意思とか立場とかそういったものを一切考慮しない強引ぶりである。ちょっとにわかには信じられない。
 とはいえ、嬉しい気持ちは勿論ある。むしろフィーバーしている。帰ってこないなら追っかけると言ったはいいものの、元来ルリは積極的な性格ではなく、相手に対し遠慮しがちな所がある。特に心を開いた人物に対しては顕著だ。"大切な人だから宣言"の後に、だけどユリカさんが、とかそもそも私って異性として見られてるんでしょうか、とか色々考えているうちに勢いでとんでもないこと言っちゃったかもしれないと枕に顔をうずめて足をバタバタさせたこともある。それが、向こうから攫いに来たというのだ。その理由があくまで娘を護らんとする父親の心だとしても、乙女心は音を立てて反応する。表面上は平静を保っているが、もしもルリにアキトと同じ感情の昂ぶりに応じて発光するナノマシンが投与されていれば、例え闇夜でも周囲100mは軽く照らす程に燦然と輝くイルミネーションと化したことだろう。新たな都市伝説が生まれる。
「それで、私は一体何をすればいいんでしょうか?」
 行為そのものはアキトの独断であろうが、ルリを保護することはネルガルにとって損にならない。その電子戦能力を上手く活用すれば、莫大な利益を上げることも可能だろう。保護されているとはいえ、"電子の妖精"は遊ばせておくにはあまりにも惜しい人材だ。
 ルリにしても必死である。何を要求されるかは知らないが、そこでキッチリと仕事を果たせば自分がネルガルから離れることはない。不平不満をこぼして見切りでも付けられたら身を守る術はなく、アキトとも離れ離れになってしまうだろう。この辺りでルリは自分の立場とか部下たちのことを忘却した。
「今の所はまだ決まってないわ。おめかししてパパの帰りを待ってなさい」
 イネスにそう言われ、慌てて身支度をするものの、その際に自分の持ち物がアキトさん抱き枕(しがみついて離さなかったらしい)のみであることに気付き、ルリは嘆いた。ナデシコの私室には他にもまだ色々とコレクションがあったのに、と。
 しかしこれからは本物がすぐ近くにいるのだと前向きに考えることにし、とりあえずはエリナが用意してくれたらしい服を着込んだ。少女趣味全開なデザインはルリの嗜好とはいささか剥離しているが、まあそれでもパジャマよりはと、その破壊力を知らないがゆえの悲劇の選択である。






□□□






 さて、我らがテンカワアキトは一体いかなる理由でかような暴挙を起こすに至ったのか。
 ホシノルリを保護することに問題はない。どれだけ建前を並べようが、危機にある愛娘を救おうとしない父親などいない。いてはならない。例えば彼と同じ立場にミスマルコウイチロウを据えたならば、選択する方法は違えどその心境としてはアキトと全く変わるまい。それこそ、今すぐに娘の所へ飛んでいきたい、である。アキトはたまたまそれを可能にする異能者であったというだけだ。
 事実、アキトにしても『一瞬で頭の中が真っ赤になって、気が付いたらルリちゃんを小脇に抱えてた』てなもんである。とりあえず小脇に抱えてたことは本人に言うべきではなかろう。乙女にはそういう時にお姫様抱っこを要求する正当な権利が存在し、ましてやルリは本物のお姫様なのだ。例え相手が父親であろうと不敬罪で済む話ではない。
 ちなみにアキト(本物)はルリがしがみついていたアキトさん抱き枕(サイズは本物と一寸とて変わらない)を見て、ホロリと一筋の涙を流したという。
「川の字で寝ていた頃を思い出すな……」
 違う。その感想は多分違う。恐らくアキトは自分が見ていないだけでユリカさん抱き枕もあったのだと思っているだろう。それが美しい家族愛の姿だからだ。だが、そんな物ある筈がない。
 そして壊れ物を扱うかのような優しい手付きで抱き枕を外させ(本物のアキトだからこそ出来た芸当である)、ベッドの上にルリを寝かせた。その瞳には超が付くほどに慈愛の光が満ち、やましさが欠片も見当たらなかった。完全無欠に親子、というかむしろ母が子に向けるが如くの無限の愛がそこにある。

 アキトにとって家族とは何よりも大切なものである。幼少期に両親を亡くし、自身に充分な愛情を注がれなかった反動か、彼は新たに手にした妻と娘という家族を心底から愛した。死の一歩手前まで壊された体でありながら立ち止まることなく、強大な敵に抗うことを決意したのも、捕らわれた妻への深い愛情があったからこそだ。
 その強い想いを少しでも自分に向けることが出来たならば陽の当たる世界へと帰る道も選べたろうが、彼は何処まで行っても結局は他者のためにしかその強さを発揮できない人間なのかもしれなかった。
 そんなアキトが、どうしてルリの危機を見過ごせようか。先にも述べたが、娘を救うのは父親として当然のことである。だがそれを実行できるか、成功させられるかと言えば話は簡単ではない。誰しもがスーパーマンではないのだ。そしてルリを襲う危機は尋常ではない。なにしろ相手は軍隊であり、その手段は暗殺だ。普通の、例えばそこらのラーメン屋店主ではどうしようもないのが現実である。
 だがテンカワアキトである。"The Prince of Darkness"、宇宙全域を捜索してもそうは見つかるまいトップクラスのエステバリスライダーであり、狂気じみた修練を超えて各種戦闘技術をその身体に叩き込んだ、さらには最も熟達したA級ジャンパーの、テンカワアキトである。物理的な手段に限りはするものの、こいつに救えなければ恐らく誰にも救えまい。
 いまやアキトは、史上稀に見る凶悪で強大な親馬鹿パパだった。娘への想いで軽くハイパー化しそうな勢いである。



 テンカワアキトとホシノルリ。血こそ繋がっていないが親子であり、その年齢差は7。娘としてしか見てないアキトと、異性として見ちゃってるルリ。果たしてどちらがおかしいのかと聞かれれば、そこは意見の分かれる所であろう。しかし、お互いが想い合っているという事実は確かである。
 愛とは強い心の力。なれど、その質は様々。
 男女の愛、家族愛、友愛、神の平等な愛──時としてすれ違う、その在り方。某艦長が某副長を最高のお友達と呼ぶが如く、悲劇をも呼び起こすものである。






□□□






 どれ程の時が経ったのか。恐らくルリとしては長すぎると同時に短すぎる、そんな心地であったろう。何せ寝起きともなれば、髪を梳いたり化粧を施したりと色々な手間もかかろうし、何よりも想い人の前に立つとなれば、普段よりも力を入れて当然。今すぐにでも、という気持ちとあと少し待て、という相反する気持ちを持て余し翻弄される。
 アキトにとってもそれは変わらない。尤も彼の場合は、自分が顔を出すべきか否か、という悩みからくるものであるのだが。衝動的にルリを誘拐してしまったが、元々は最後まで家族の元に帰らないつもりであったのだ。どう言い繕おうと、アキトは犯罪者である(ついでに罪状がまた一つ増えた)。復讐を終えてからは、真っ当な世界で生きていく妻と娘を裏で守っていくのが自分の役目だと決めていた。一体どのような態度で娘に接するべきか、パパとしてのアキトが全力で頭を稼動させても答えは出ない。
 だが時は止まってくれない。悩むものも躊躇うものも置き去りにして、思うがままに針を進めてゆく。

 ルリは鏡に映る自分を見て、ぐっと意気込んだ。
 アキトは俯いていた視線を上げて、足を踏み出した。



 ネルガルの数ある研究所、そのどこか──その一室。アキトとルリが向かい合っている。
 ゴゴゴゴゴとかざわ……ざわ……とか擬音がつきそうな、まさに一触即発の空気。まるでブラックサレナと夜天光の決戦時の如く緊張感を孕ませており、誰が見たとしても眼前の黒マントの変態と可憐な少女のツーショットに楽観的思考を進めることはできまい。
「アキト……さん」
 先手を打ったのはルリだ。瞳に迷いを滲ませながらも、決して視線は逸らさずにアキトと相対している。その姿はまさしく今こそ自分に襲い掛からんとする変態に気丈にも抵抗の意志を絶やすまいと決意する勇敢な少女のそれ。勿論ルリの内心はそんなものではないし、アキトとてそんな想像を巡らせていた筈もない。
 あくまで客観である。
「イネスさんから話は聞きました。まずは、お礼を言います」
 ぺこり、とルリは頭を下げた。その礼儀正しさに、アキトは愛娘の評価を最大値から更に上げた。
「……礼はいい。俺のしたことは誘拐だ」
 どうやらアキトは未だ決心がついていないようであった。復讐のために作り上げてきた仮面は、最早アキトの深い所にまで食い込んでしまっている。そう簡単に捨て去ることは出来ないし、かといって復讐を終えた今となってまで、そのような態度をとり続けることに対する疑問も少なくなかった。あの火星での決戦後、アキトはこれからの身の振り方を散々に考えたが、どうにも纏まらなかったのだ。
 ルリは極めて聡明な頭脳を有しているが、そうした人間の内面を推し量るには経験が浅すぎる。何と言っても、まだ16歳の少女であるのだから。
 だがルリは、理解できないのならばできるまで研鑽を重ねるべしという意志を持っていた。彼女はそうした意味での優秀さをも備えていたのだ。
 故に、臆すことなく踏み込んだ。
「それでも、アキトさんが私達を忘れたわけじゃないってわかりましたから。……その、嬉しかったです」
 ──多分、ちょっぴり、半歩ほど。

「ルリちゃん……」
 その言葉を聞いて、アキトは殆ど無意識に、ルリの頭へと手を伸ばした。ルリもまた、自分が何をされるのかを察し──しばらくは子供扱いされるだろうけれども、親子として過ごしたあまりにも短い期間を埋めることもまた、自分の望みであることを理解し──優しく頭を撫でる大きな手の感触を受け入れ──
「ッ!!」
 ──ようとしたのだが。
 アキトの手が頭に触れた瞬間に激痛が走り、ルリは反射的に身を竦めてしまった。

 激痛の正体は、ルリの頭にできていたコブであった。朝一にベッドから転げ落ち頭を強打したことにより、目立たないがしかし確かな傷跡が存在していたのである。患部に直接触れられたことと、完全に気を抜いていたこと。あと間の悪さ。それらの要因が絡み合い、悲劇は起こる。

「………………」
 ルリは恐る恐るアキトを見上げた。
 とても悲しそうな顔をしていた。

 ──そうだよなやっぱり許されるわけないよなって言うかそもそも嫌だよな髪は女の命っていうし俺みたいな殺人鬼が触れていいものじゃないよなハハハ俺は何を期待していたんだ昔は昔今は今だルリちゃんの知っているテンカワアキトは死んだ俺にできることはただ闇を彷徨い野垂れ死ぬだけルリちゃんには輝かしい未来があってきっと俺が何もしなくても部下やナデシコの皆が守ってくれていたはずで俺のしたことは結局彼女を危険に晒すことでしかなくてああ畜生俺の大馬鹿野郎ゴメンねルリちゃん俺の手は血に塗れている。

「あ、あのすいません、今のは……」
 そこまで言いかけ、ルリは口篭った。
 どう説明するべきなのだろうか。まさか本当のことは言えない。ベッドから転げ落ちて頭を打ってしまったのでコブができていたのだなどと、美少女的にアウトである。同性やナデシコCの部下相手ならばまだともかく、想い人にそれを告げられるほどルリは豪胆ではない。
 結局ルリはただ謝るしかできなかった。恐らくはそれがいけなかった。そのやり取りの間に、アキトは悲壮な決意を固めてしまっていたのである。
 ──自分は決して娘に触れてはいけない。しかし、娘を守るのは父親の役目である。他に適任者がいようとも、こればかりは譲れない。ここで立候補してくるような男がいたら殴り飛ばす。ともあれ、行動に移してしまったこれ以降、全身全霊で万難を排さなければならない。嫌がられると辛いので、あくまで影から。
 アキトの表情が、鋼鉄へと変貌した。



 男の名はテンカワアキト。誌面においては"The Prince of Darkness"と呼ばれる、ターミナルコロニー襲撃の実行犯。史上稀に見る凶悪な犯罪者として悪鬼の如く憎まれる、時空間跳躍を行使する異能者。
 彼は本日この瞬間より、ありとあらゆる災厄から娘を守り通す鉄壁の守護者と化した。

 ある時は暗殺者を返り討ちにし。
 ある時はネルガル会長の好色な視線からルリを守り通し(目潰しで)。
 ある時は小指をぶつけそうなタンスの角を削り。
 ある時は昼食のカキフライがちょっと痛んでることを事前に教え。
 ある時はうっかり説明という単語を口にしてしまったルリの身代わりになり。
 ある時はラピスラズリが思い切り振ったコーラをルリに渡そうとするのを阻止した。

 彼のそんな活躍とは裏腹に、ルリは普段全く自分の前に姿を現さずいざとなったらボソンジャンプ使ってまで逃げるアキトを想い、夜毎枕を濡らした。
 その夜もまた、少しだけ酒精に染まった頭(ヤケ酒)で「やっぱり夜這いくらい仕掛けないと駄目なんでしょうか」とか考えては誘惑を振り払い、ベッドの上で足をバタバタさせていた。
 しかし突然、がくん、とバランスを崩し、またもや何時ぞやのようにルリはベッドから転げ落ちた。


「……あれ?」
 予想していた痛みがなかったことに、ルリは気の抜けた声を漏らした。
 何時の間にか、そこにはアキトさん抱き枕がセットされ、その抱き心地抜群の柔らかさと暖かさでルリを衝撃から守ってくれていた。





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